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村崎ツトム編~サングラスをはずさない理由~

村崎ツトム、12歳
成績は中の上ぐらいで、少し運動神経が鈍いどこにでもいそうな少年。
ある日、その少年にある事件が訪れた。

ピーポーピーポー

普段は静かな町に、救急車のサイレン音が鳴り響く。交通事故があったのだ。
事故にあったのはツトムの父親。
信号が青になったので渡ろうとすると、横から信号無視の乗用車がつっこんできたのだった。
ツトムの父親は病院に運ばれた。
遅れて、ツトムも病院にやってくる。

「父さん、父さんしっかりして」
「今から手術なので、廊下でお待ちください」
ツトムの父は手術室に入っていった。

2時間後、ようやく手術が終わった
「先生!父さんは?」
「手術は成功しました。しかし、2週間ほどの入院が必要です」
それを聞いて、ツトムと隣にいるツトムの母親は胸をなでおろした。
そして、その後にツトムの母親は躊躇しながら聞いた。
「あの・・・・費用というのはどれぐらいかかるのでしょうか?」
「そうですね、今回の場合は難しい手術だったので・・・・・・」
ツトムとツトムの母親は値段を聞いて愕然とした。
村崎家にとってはとても手の届かない大金であった。
「払えないんですか?それは困りますよ。こっちだって仕事なんですから」
ツトムはこぶしを強く握り、歯を食いしばった。
そして、言った。
「後1年・・・・・いや、後半年待ってください。絶対払いますので」
医者はツトムの目を見てから言った。
「分かりました。半年だけ待ちましょう」
ツトムと母親はその後、父親が寝てる病室に向かった。
「ちょっとツトム、あんなこと言ってどうする気なの?」
「僕も働くよ」
「あなたまだ小学生よ?そんな簡単に働けるわけないじゃない」
「探せばきっとあるよ。新聞配達とかね」

ツトムは病院に置いてある新聞を広げた。
どこかに、求人の情報が載ってるかもしれない。そう思ったからだ。
すると、ツトムはある一文に目がいった。
そして、そこに指を差し、母親に見せながらこう言った。
「これなんかどうかな?」
そこにはこう載っていた。
『あなたの夢叶えます』
そして、その下にはこう書かれていた。
『女の子タレント募集』

さっそく応募したツトムだったが、それからはとんとん拍子に人気がでていった。
もともと女顔で、熱意があり、努力家だったのがよかったらしい。
カツラは、親戚の美容師からもらった。
服は、いとこの姉ちゃんからからもらった。
後は、金さえもらえれば・・・

半年後

「これが手術費用と入院代です」
「まさか本当に半年で返してしまうとは・・・・いったいどうやって?」
「それは秘密です」
ツトムはようやく手術費を返し終わった。
しかし、いまだ父親は退院できない状態が続いていた。
「でも、いつ父さんは退院できるんですか?」
「あ・・・・ああ、まあもうすぐじゃないかな?」
「そうですか、よかった」
ツトムは考えた。
父親が退院したらどうしようか?
そうだ、久々にキャッチボールでもしてもらおう・・・・と
ふと、そのとき、病院にある時計を見た。
もうすぐで仕事の時間である。
「あっ、じゃあ僕もうそろそろ、帰ります。ありがとうございました」
ツトムは走って病院を出た。
医者は、ツトムの背を見送ってからツトムの父親のトコまで診察に来た。
「じゃあ、診察しますので、服あげてください」
医者は寝転んでいるツトムの父親にむかってそう言った。
「なあ、先生教えてくれ」
「何がですか?」
「オレの寿命だよ。後何ヶ月ぐらい生きれるんだ?」
「何を言ってるんですか。すぐによくなって退院できます」
「そういい続けて半年もたつじゃねーか!!それともなんだ?金目的で入院させてんのか?」
そうやって、ツトムの父は立ちあがり、怒鳴った。
と、そのとき
「ゴホッゴホッ」
ツトムの父は手で口を押さえた。
その手を見ると先ほどまで肌色・・・いや、前よりは青くなっていた手が今度は赤黒く塗られていた。
「安静にしてください」
「オレは、オレの寿命が知りたいだけなんだ」
「はっきり言いましょう。いまの状態じゃあ、いつ死んでもおかしくないです」
しばらくツトムの父は黙り込んだ。
「・・・・・・・・そうか」

そのころ、村崎ツトムは女装した姿でテレビ局に来ていた。
だが、なんかいつもと違って騒々しい。
何があったのか分からないが、「おはようございます」と挨拶しながら人の間をとおり抜けていった。
挨拶は返ってこなかった。
そこでツトムは気づいた、みんながみんな自分のほうに視線をやってることに。
しかも、冷たい目線。
そのとき、ツトムは頭がすこし軽くなった感じを覚えた。
ツトムはその感覚のを覚えた後すぐに、頭に手をやった。
カツラがないことが分かった。
どうやら、誰かに引っ張って取られたらしい。
その瞬間、ツトムはまぶしさを感じた。
カメラのフラッシュである。
360度どこからでもシャッターを切る音が聞こえる。
どうやら以前、どこかでカツラをとったときに写真を撮られ、それが週刊誌で話題になり、その証拠を撮られているらしい。
それは、あまりに突然すぎた。

それから1時間後には全国ネットのテレビで流され、次の日のスポーツ新聞の朝刊はその記事が一面を埋め尽くしていた。
ただ、幸いなことに訴訟にまでにはいたらなかった。
その代わり、村崎ツトムの顔が全国に広まってしまうことになったが・・・
ただし、なんとか名前を伏せることはできた。

次の日、ツトムは父親の見舞いにとぼとぼ足で行った。
きっと怒られるだろう。全国に顔を知られるほど大変なことをしてしまったのだ。
それに、男が女の格好してた・・・・まずそのことが情けないと思われるかもしれない。
ツトムが病室に入ると、父親は今朝の新聞を読んでいた。
そこには、ツトムの顔が載っていた。
怒られる。そう思った。
しかし、予想は違った。
「オレのためにこんな苦労をさせてしまって・・・・ありがとう・・・・」
いつもより弱弱しい声で言った。
涙さえ流しそうな、そんな感じであった。
「ゴホッゴホッ」
ツトムの父はセキをした。
「大丈夫?とう・・・・さ・・・・」
ツトムは父親の口のまわりに血がついてることに気づいた。
「大変、先生呼んでこなきゃ」
ツトムは、病室から出て行こうとした。
しかし、父親はツトムを呼び止めた。
「待ってくれ、もうちょっと一緒にいてくれ。ツトム」
ツトムは迷ったが、その口調が本当に真剣に思えたので、ツトムは戻ることにした。
「あの、引き出しを開けてくれ」
ツトムは、父が指差した引き出しを開けた。
そこに入っていたのは、サングラスであった。
「今じゃあ信じられないかもしれんが、オレは高校時代のときモテモテでな、女の子から逃げるのに苦労した」
父は続けた。
「だが、案外サングラスかけただけでばれなかったもんだよ。で、それがそのときのサングラスだ」
「へ~」
ツトムはそのサングラスを手に取りながら返事をした。
「そのサングラスをお前にやる」
「こんなの使わないよ」
「何言ってるんだお前!こんな世間を騒がせて顔知られてるんだぞ」
「でも、僕の行動範囲狭いし、クラスのみんなにはもうバレテルだろうし」
ツトムの父はしばらく黙ってからこう言った。
「お前はもうすぐ、母さんの実家に引っ越すことになる」
「何言ってるんだよ? 母さんは父さんが病気になったぐらいで離婚するような人じゃないよ」
ツトムは父親からもらったサングラスをかけた。
思ったわりにははっきり見えて、大きい。
そして、またはずそうとした。
「はずすな!」
父はそう言った。
そう言ったあとにまた「ゴホッゴホッ」咳き込んだ。
「父さんまずいって、やっぱり先生呼ばなきゃ」
「ここから離れるな!!いいか、そのサングラスとるなよ。オレとの約束だ」
父は、ツトムの腕を強くつかんだ。
「どうしたんだよ父さん?今日の父さんおかしいよ」
「今までありがとう・・・・・・」
そう言ったとたん、父は目を瞑り、ツトムからゆっくりと手を離し、そのまま永遠の眠りについた。
「父さん、父さん、とうさーーーーーーーーーーん」
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「とかだったりしてね」
「フフ」
と、村崎ツトムがサングラスをはずさない理由を考えてるつぐみと藍沙がいた。
					
オチがオチなのでもうちょっとコメディー色強くしようと思ったのですが、結局こうなりました。 多分いないと思いますが、途中まで感動した人がいたらすみません。 それにしても、理由なんてあるのかな~? いや、何かのプライドが許せないとかそんな理由だと思いますが。