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最終話~いじめられた日々~

聖也は竜雄と別れた後、回りに気を付けながら由香の控え室に向かった。
聖也は歩きながら、先ほど別れた竜雄のことを考えていた。
聖也自身、竜雄が最近、前と違うというのはよく分かっていた。
多分、啓太が登校拒否しだすようになってからだ。
「ふん、弱虫が・・・」
ふと、聖也はつぶやいた。
聖也は控え室の近くまでやってきた。
運がいいことに見張りがいなく、聖也はすんなりと由香の控え室まで来ることができた。
『高橋由香様』
ドアの表札にはそう書かれている
聖也はまわりに誰もいないことを確認して、ドアに耳をくっつけた。
中から声が聞こえる・・・・一人は由香・・・あと一人は男らしいが、マネージャーか?
話は聞こえなかったが、ここにいるのは間違いない。
とりあえず、聖也は近くの曲がり角に隠れることにした。
しばらくして、ドアが開く。
まず中から出てきたのは、男のほうであった。
あんな男がマネージャーか。高橋由香がかわいそうだろ・・・・と思いながら、気づかれないようにしていた。
「大丈夫、誰もいないから」男はそう言った。
どうやら、聖也のことは気づいていないらしい。
無用心だな・・・・そう思いながら、気づかれないように、由香が出てくるのを見た。
聖也は唾をのみこんだ。聖也は唖然とした。
中から出てきたのは、由香ではなく啓太だったからである。
なぜ啓太が出てきたのか、聖也には分からなかったが、ふと、前に竜雄が言った言葉を思い出した。
「高橋由香と植田ってちょっと似てねー?」
まさか、そんなまさか・・・。
そう思いながらも、聖也は啓太のあとをつけた。
しばらくすると、人通りが少ないところに出る。
聖也はそれを知っていた。
その人通りがないところまで来ると、聖也は啓太を呼び止めた。
そして聖也は言った。
「テメーがなんで高橋由香の控え室から出てくんだよ」

いっぽう、啓太のほうはいきなりそんなことを言われ、唖然としていた。
体は小刻みに震えている。
啓太は何も言わず、ゆっくりと後ろ足で聖也から離れようとした。
しかしすぐ後ろには壁があり、これ以上は離れられそうになかった。
と、そのとき。
聖也は右手を拳にし、すばやく手をあげて、啓太を殴ろうとした。
だが、啓太はすばやくしゃがみ、なんとか痛い思いをしなくてすんだ。
が、聖也のほうはおもいっきり殴ろうとしてよけられたので、壁に思いっきりあたり、血さえでていた。
しかし、聖也はまるでそれが痛くないかのようにすぐに顔を啓太のほうにむけ、また殴りかかった。
今度は啓太はすばやく持っていたカバンを盾につかい、身を守った。
そして、聖也が殴った後、そのカバンは啓太から離れた場所に飛んだ。
聖也のほうはまた殴る態勢に入ろうとしたが、それをやめてカバンをとりにいき、中身を見た。
そこには、由香と同じ髪色のカツラと先ほど由香が着ていた服が入っていた。
「やっぱりそういうことかよ・・・」
聖也はそういうと、啓太の目をみて、ゆっくり啓太のほうに近づいていった。
啓太のほうは、逃げたい逃げたい・・・と思いながらも金縛りにあったかのように体が動いてくれなかった。鼓動が早くなり、息もうまくできない。苦しい。
聖也は両手を啓太の首までもっていき、啓太の首を締めた。
「よくも、オレをだましてくれたな」
聖也はそう言って、さらに締める力を強くした。
啓太は聖也の顔を見た。
今までなら、面白いから、ムカツクから・・・そう言った理由でいじめていた。
しかし今は違う。
今の聖也の目はまるでうらんでいるかのような顔であった。
いや、実際そうなのである。
啓太は、今までのいじめは恨まれる覚えはないと思っていたが、今回ばかりは恨まれても仕方ないことをやってきたのかもしれない。そう思った。
ふと、啓太の頭に芸能生活のことがフラッシュバックしてきた。
コンビニで大室とであったこと。
初めてのオーディションで合格したこと。
最初はいじめられてはいたが、今ではすっかり仲良くなった美央のこと。
いじめがテーマについての番組に出たこと。
ファンからの声援、ファンからのファンレター・・・。
しかし、そんな意識もだんだんもうろうとしてくるようになってきた。
ただ、最後に分かったことは・・・・。
死ぬ・・・・ということだった。
しかし、そう思った直後、近くを通った男性がこちらに気づき。
「ちょっと、キミ何をしてるんだ!!」と言って、聖也の腕をつかみ、啓太から離した。
啓太は間一髪で助かったらしい。
啓太は胸をなでおろし、全身に力が抜けそのまま地面に倒れこんだ。
最後に、聖也の顔が目にはいった。

1週間後
由香は控え室でニュース番組を見ていた。
ニュースでは、こないだの啓太と聖也のことについて流れている。
もちろん、聖也の名前を出していないし、啓太の名前も出してもらわないようマスコミにたのみ、出していない。
「加害少年はわけの分からないことを話しているということです」
キャスターはそれだけ伝えた。
わけの分からないこと・・・・・なんであろうか。
啓太と由香は同一人物だ!と言えばそう思われるかもしれない。
この1週間、何度かマスコミにも殺されそうになった理由を聞かされた。
そのたびに、理由は分かっていながらも、「分かりません」とだけ言っておいた。
その後はいつも罪悪感がおしよせる。
だが、本当のことなんて言えるわけがない。
もし言ってしまったら、それが全国ネットで放送され、聖也のようにまた違うだれかが啓太を殺しにやって来るかもしれない。
ふと、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
大室であった。
「どうした?久々の仕事なんだから元気にしろよ!!」
大室は言った。
あの事件以来、偶然にも1週間仕事は休みであった。
なので、今日は1週間ぶりの仕事ということになる。
ちょうど、首のアザも消えかかってきたところである。
ちなみに、大室は事件のことを知らない。
「大室さん、お願いがあるんです」
「何だ? 何でも言え。お前のおかげで最近うちの事務所は金が入ってくる入ってくる」
由香はしばらくだまり、そして言った。
「この仕事・・・・やめたいんです・・・・」
しばらく、静かになった。
「何でだ?」
先ほどとは違う声色で大室は言った。
ふと、由香はテレビを見た。
テレビでは、CGで描いた再現VTRが流れていた。
「まさかお前・・・・」
しばらく黙ってから、由香は言った。
「こないだの握手会のとき、由香の控え室から出てくる啓太を見られたらしいんです」
また、数秒間静かになる。
「何でか分からないんですけど、僕が被害者なのに、罪悪感があるんです」
つづける
「これ以上仕事やってると、また同じことになりそうで・・・」
大室は由香と同じ目線になるまでしゃがみ
「そうか・・・」とただそれだけ言った。
少し悲しそうな表情である。

2年後
啓太は聖也を探していた
ニュースによれば、だいぶ前に聖也は施設から出ているらしいが、家には帰ってきてないらしく、どこに行ったか分からずじまいであった。
ふと、電気店のショッピングウィンドウのテレビに今はやりの女の子アイドルが写っていた。
それを見て、啓太は昔を思い出した
未練がないと言えば嘘になるが、これでよかったと啓太は信じている。
ふと、近くに大室の事務所があることを思い出し、しばらくぶりに行ってもいいかもしれないと思い、。
その途中、深く帽子をかぶり、地味な服を着た男とすれ違った。
なぜか分からないが、啓太は察した。
それが、聖也だと。
啓太は、聖也に話しかけた。
					
1 2 3 4 5 END
なんだか意味不明な最終回で、すみません。
一応、タイトルの通りいじめをテーマにした小説のつもりです
小川美央をもう少しだそうと思っていましたが、結局登場したのは第3話だけ。登場キャラをうまく活かせないなと思う今日この頃です。