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第1話~出会~

季節は桜が散り始めたそんな時、東京のとある小学校の成績学年トップの男の子、一条飛鳥は今日も休み時間中に算数の問題集をやっていた。
場所によっては眼鏡のレンズから光が反射しておりどんな目をしているのか分からない。肌は白く、髪もキレイで、少し女の子っぽく見える。
いや実際、飛鳥は女の子と間違われることがよくあった。

「えっと、分数の割り算は逆数にするから・・・」
と、その時突然、飛鳥の目の前が真っ暗になった。
「だ~れだ?」
暗くなったと同時に、飛鳥の後ろからクラスメートの声がしてくる。
そのクラスメートが飛鳥の目、というよりメガネを手で覆ったのである。
飛鳥はすぐさま、腕でそのクラスメートの腕を追い払った。
「やめてください、これだけで眼鏡に指紋がついて見えにくくなるんですよ」
そういうと、飛鳥はポケットから眼鏡拭きをとりだし、眼鏡を拭いた。
「やっぱ、飛鳥はかわいいよ」
「ふざけるのもいい加減にしてください、私もあなたも男なんですよ」
そのクラスメートの名は松本裕司。
飛鳥の友達・・・・・・とは二人とも認めていない。
飛鳥からしてみれば、裕司とは何の関係もないと思っていたい。
裕司からしてみれば、飛鳥とは友達よりも上の関係だと思っている。
そう、裕司は飛鳥のことが好きなのである。
といっても、同性愛者ではなく、ただ祐司はかわいい子が好きなだけであって、かわいくて好きになったのが飛鳥だっただけで、男だから飛鳥を好きになったわけではないという。
ちなみに、裕司が飛鳥のことを好きと知っているのはクラスにいない。みんな、仲のいい友達としか思っていないようなのだ。
「そうそう、映画の割引券もらったんだけど一緒に行かない? おごるよ」
「女子と一緒に行けばいいじゃないですか。あなたと一緒に映画を見に行きたい人なんて何人でもいるんですから」
裕司は女子からはよくもてる。バレンタインの日も、校内で一番チョコをもらった男子として有名である。
「じゃあさ、カラオケ行こうぜ。それなら別に男同士でもよくあることだろ」
「勉強中ですので、静かにしてください」
飛鳥は裕司をつきかえし、また席について問題集を解き始めた。

次の日曜日
飛鳥は新しい問題集を買うため、少し家から距離があるが、大き目の本屋に来ていた。
本屋には他に、漫画やアイドル雑誌などが置いてあったが飛鳥にとってはまったく興味のない物であった。
だから、本屋から出たあと、近くでCM撮影をしていると聞いてもまったく興味がなかった。
興味はなかったが、撮影現場のほうに家があるため、その方向へむかうしかなかった。
「やばい、やばいよやばいよ~」
帰り道。飛鳥の近くでベンチに座って頭を抱え込んでいる男がいた。
髪は茶色で、ちゃんと顔は見ていないが20代後半ぐらいだろうか?
飛鳥はその男を無視して家に帰ろうとしたが、やはり気になったので相談にのることにした。
「どうしたのですか?」
その言葉に反応して男は顔をあげた。
そして、何秒か飛鳥の顔をじっと見つめると「よしっ」と言って立ち上がる。
「お願いがあるんだ」
男は飛鳥に向かっていった。
「私にできることなら何でもします。もちろん、内容によっては断わるでしょうが」
「そうか。いや、実は今日予定していた仕事の子が来れなくなったらしくて」
そこで飛鳥は思った。
この人はどこかの会社の社員なのだと。
そして、取引先の相手が来れなくなって困っているのではないかと。
ただ、飛鳥には一つ疑問が浮かんだ。
私に何が出来るかと。
「だからさ、代わりを君にやってほしいんだけど」
「はい?」
今の言葉で飛鳥はよく分からなくなった。
代わり? 小学生の自分が代わり? 何の関係もない自分が代わり?
「大室君、早く何とかならんのかね」
遠くのほうで、そんな声が聞こえてきた。
どうやら、飛鳥の目の前にいる男は大室というらしい。
そして、大室はその言葉を聞いてすぐに言った。
「はい、この子が代わりです」
「えっ!?」
まだ許可をしていないのに・・・なんて人だ。
と、飛鳥は思った。
「いや、あの私は」
「ごめんね、すぐ終わるだろうから」
そう言われて、飛鳥は大室に手を引っ張られ、近くにあったバスの中に入れさせられた。
「この子にメイクしてちょうだい」
大室は近くにいた女性にそう言って、飛鳥を椅子に座らせた。
「そうだな~?髪もうちょっと長かったらよかったんだが、そうだカツラカツラ」
飛鳥にとってはわけが分からなかった。今から何をされるのかまったく想像つかなかったからである恐怖心すら芽生えそうであった。
「ちなみに君の名前は?」
「あすかです」
「へ~、明日香ちゃんか」
「えっ?」
飛鳥は初めて自分の名を、ちゃん付けで呼ばれたことにかなり違和感を感じた。
そして、30分ほど経過して鏡の前に立たされた。
「さっきよりかわいくなったじゃん」
「ん?」
飛鳥は眼鏡を取られた状態にあったため、鏡の中の自分がよく見えずにいた。
そして、飛鳥は目を細め、少し鏡の前に近づいた。
「えっ?」
そこにいたのは、青と白をベースにした洋服を着、下には、緑色のスカートを履き、髪が胸あたりまであるカツラをかぶらされ、
どう見たって女の子の姿をした飛鳥がそこにいた。
					
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