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第6話~恋心~

季節は梅雨時期になり、今日は午後から雨だと天気予報で言っていた。
そのため、朝は雨が降っていなかったが、放課後になると激しい雨が降っていた。
飛鳥は帰ろうと玄関に出、傘を差して外に出ようとした。
「ちょっと待てよ」
と、突然飛鳥は呼び止められ、勝手に裕司は飛鳥の傘の下に入ってきた。
「入らせてよ、傘持ってきてないんだ」
正直、飛鳥は断わりたかったが、雨に濡れて帰れと言うこともできず、そのまま二人で帰ることになった。
「朝に天気予報ぐらい見てきてください」
飛鳥は前をむいて裕司にそう言った。
「見たよ」
裕司はそう言った。
その言葉に飛鳥は多少ビックリした。
ニュース番組によって予報が違ったのだろうか?
そう思った。
だが、どうやら違うようだ。
「見たけどさ、飛鳥と相合傘したかったから」
飛鳥はその言葉で多少、キレそうになったが、気持ちを静め。
先ほどと変わらずに歩いていた。
男の自分が、男の裕司を好きになるわけがないのに。何で祐司はこんなにもアタックしてくるのだろうか。と、思いながら。
「もうそろそろ諦めたらどうですか? 男が男好きになるなんておかしいですよ?」
「そうなの? 俺別に、親にも先生にも男好きになっちゃダメって教わってないけど」
その言葉に飛鳥はまた呆れた。
まずその考え方が間違っている。
異性を好きになることは本能であっても、同性を好きになるなんて本能ではない。
いくら、女みたいな顔つきだからといって。
「じゃあ俺こっちだから」
そう言って、裕司は傘から外に出て一人走り出した。
最初からそうするつもりなら断わればよかった。飛鳥は思った。

1時間後、飛鳥はテレビ局についた。
「おかしいと思いませんか? 男が男好きになるなんて」
飛鳥は大室にそう問いかけていた。
「さぁ? そんなに珍しいことでもないと聞いたことあるぞ」
予想はしていたが、大室は飛鳥の期待通りの答えを返してくれなかった。
それどころかこんなことまで言ってきた。
「つきあっちゃえば?」
その言葉には思わず飛鳥もふきだしてしまった。
そのせいで、飛鳥が読んでいた社会の教科書に唾が飛んでしまった。
「つきあえるわけないじゃないですか!」
「だって、どうせお前今好きな人いないんだろ?」
その言葉に、飛鳥は少しだけ赤くなり、こう言った。
「いますよ、私にだって、好きな人ぐらい」
数秒、沈黙が続いた。
「えっ!!!!!!!!!!!!!!」
大室はかなりおおげさに驚いた。いや、おおげさというよりそれは自然にそうなったらしい。
「そこまで驚かなくてもいいじゃないですか」
「いやいやお前の場合、恋? そんなのしてる暇あったら勉強してますよ。って言いそうだし」
飛鳥は、どういう意味だよ? というような目線で大室を見た。
「まあ、私も行動や言動には表してませんけど」
「ちなみに聞くが、女だよな?」
「当たり前じゃないですか」
「目が合うとドキッてしたりする?」
「そりゃあ少しは」
飛鳥は、呆れた顔で大室のほうを見た。
大室は、不思議な顔で飛鳥のほうを見た。
「中西明日香さん、準備してください」
「はい、今すぐ行きます」
大室は飛鳥の好きな人がどんなのかを想像していた。
「やっぱその子も勉強オタクか?」
実際、飛鳥の好きな人はそこまで勉強できるほうではなく。
クラスでも真ん中ぐらいの成績である。
だが、容姿はかわいらしく、そのうえ性格は優しく、いつも笑顔を忘れないような、男の子なら誰でも好きになりそうなタイプである。
名は、紺野アズサという。
ただ、アズサは裕司のことが好き。と、飛鳥は風の噂で聞いていた。
全く変な三角関係だ。
松本裕司→一条飛鳥→紺野アズサ→松本裕司。
という関係なんて。
まあ、そんな噂を聞いていなくても、飛鳥は、告白するつもりはなかった。
告白しても自分みたいなガリ勉な男なんてふられるだけだ。飛鳥はそう思っていた。

それから1週間が過ぎた。
その日は珍しく、天気予報とは違って雨は降らなかった。
そのため、飛鳥は傘をささずに学校から家に帰ることにした
しばらく歩いていると、後ろから声をかけられた。
「一条君」
ふりむくと、そこにはあのアズサがいた。
すこし走って飛鳥のほうにむかっているため、水溜りの水がはねているのが分かった。
「どうしたのですか? そんなにあわてて」
飛鳥の心臓はさきほどより早く動いていた。
「ううん、ただ見つけたから」
「そうですか」
飛鳥は一度目を閉じて、少し深呼吸してからもう一度歩いた。
そしてなぜか二人は、一緒に帰ることになった。
飛鳥は少し、いやかなりドキドキしていた。
「あの、一条君ってすっごい頭いいよね」
「お褒めありがとうございます。将来のためなので」
「私、頭のいい人好きだよ」
飛鳥は、先ほどより心臓の動きが早くなり、逆に止まりそうないきおいであった。
「あのね、私一条君のことが好き」
					
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